恋色シンフォニー
「ベト5好きなの?」
何度目かの月曜日。仕事帰りのごはんへ行くとき、私の車に乗った三神くんが言った。
ベト5、ベートーヴェンの交響曲第5番。通称『運命』。
そういえば、毎回車の中のBGMはこの第4楽章だ。
この曲は冒頭の『ダダダダーン』が超有名だけど、私が一番好きなのは、第3楽章から第4楽章へと切れ目なく続く部分。暗い短調から、明るい長調へと転じるんだけど、暗い世界にサーっと光が差し込むような、とても劇的な箇所で、いつも感動する。
そして、そこからの第4楽章の力強くてかっこいい音楽を聴くと、勇気づけられるのだ。
「好きっていうか……、まあ、好きだけど、気合い入れたい時に聴く。最近の月曜日はこれ」
「月曜日は気合い入れたいってこと?」
「会議もあるし、気合い入れて仕事しないと終わらないからね」
誰かさんのせいで。
「フルヴェンとベルリンフィルの1947年ライブ盤?」
「そう」
音は悪いけど、伝説的名盤として知られている。
「そうかぁ。気合い入るよね、確かに」
三神くんは嬉しそうに言った。
「僕も好き」
それをきいて、私も嬉しくなった。