恋色シンフォニー
私は田舎で育ったから、近くにヴァイオリン教室なんてなかった。
ピアノはお稽古事として習った。
ずっとヴァイオリンに憧れてたけど、遠い遠い世界のことだと思ってた。
大学の入学式。
学生オーケストラの演奏をきいて、びっくりした。憧れてた世界がそこにあった。
その後のサークルの勧誘で、さらにびっくりした。
『やったことなくてもヴァイオリン弾けるようになるよ! 弦楽器パートは半分が初心者だから、安心して。はい、弾いてみよう!』
そう言われて、ヴァイオリンを渡された。
世界がひっくり返ったかと思ったほどの衝撃だった。
憧れてやまなかったものが、手の中に転がりこんできたんだもの。
その日のうちに入団を決め、ヴァイオリン漬けの4年間が始まった。
でも、どんなに練習しても、当然、小さい頃からやってる人のようには弾けなかった。
過去に戻れるとしたら、幼稚園……ううん、せめて小学生でいい、そこでヴァイオリンを始めたい、と思うほどにのめりこんだ。
自分の卒業式には、袴をはかず、ステージで演奏することを選んだ。