恋色シンフォニー


「今日は何しようか?」
ブランチを食べながら、三神くんが爽やかに言う。
こちらは爽やかとはまいりません。
「……疲れてるし、化粧道具がないので、どこにも行けません」
「そっか。じゃあ、DVDの続きでも見てゆっくりする?」

卒業記念演奏会、後半は、ブラームスの交響曲第1番。

第2楽章に、長いヴァイオリンソロがある。

三神くんがみんなからどれだけ愛されてるコンマスだったかがわかる選曲だ。

あの美しいメロディを、三神くんはどんな風に弾いたんだろう。

……でも。

「……音楽は、ちょっと、お腹いっぱいかな……。何か映画のDVD観たい」

その日は、映画を見て、おやつを食べて。
付き合いはじめの頃のふわふわした甘い時間を存分に味わって。

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