さくら、ひらひら。
「桜、分かってる?過去、だよ。……今じゃない。大切なのは今だし、今、付き合っているのは俺たちだろ?」

思いがけない海斗の言葉に、痛んでいた胸は、違う痛みを覚えた。
それは、きゅぅ、と締め付けられるような甘い痛み。
私の言葉より、態度より、この胸の痛みは素直だ。

「ねぇ、それよりさ。俺は自惚れても良いの?桜のそれは、焼きもちだ、って」

紛れもない、私の焼きもちを捕まえて海斗は嬉しそうに言う。
その笑顔が憎たらしくて、でも、愛しくて、幸せで。
不思議。
幸せって、こんな風にも見つけられるのね。
初めて知った。

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