さくら、ひらひら。
気をとり直したように香澄先輩は桜と向き合い、何を言い出すのかと思ったら……

「私、女の子が好きなのよ」

と、桜の手をそっと握るものだから当の桜はまたしても困惑ぎみに固まる。

「桜、違うから。先輩ちゃんと彼氏いたから」

この言葉は先輩には酷だったかも、と気づいても桜を放置するわけにはいかない。
僕がフォローすると、あからさまにほっとする桜。
その様子がなんだか微笑ましい。
心が柔らかく、暖かくなる。

この気持ちは、桜が初めて僕にくれたものだ。

「先輩。だから、あからさまにすぐわかる嘘を言うのはやめてください」

もう一度たしなめると、はーい、と笑った。

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