さくら、ひらひら。
段々と強ばるその表情は、ぐっと、溢れそうになる物をきっとこらえているんだろう。

「先輩が、僕の近くにいても、いなくても。僕の気持ちは、今は、ちゃんと桜に向いてるから」

好き“だった”人に……先輩に、傾いたりは、しないから。

「僕の気持ちを試そうとしなくても、大丈夫だよ」

三角関係の末に、友達に彼氏を奪われてしまった先輩は、きっと桜と自分を重ねていたんだろう。
先輩は、とても優しいから。

僕の気持ちを、知っていたから。


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