さくら、ひらひら。
どうしてだろう。
人というのは、傷つくのがわかっていても、好奇心には勝てないものなのかな。
そのまま息をひそめて、静かに見つめる。

『海ちゃん、何の季節が好き?』
『春が好きだな』

心底、幸せそうに海斗は言う。

『入学式の季節、出逢いの季節だね』

楽しそうな声が、かわいらしい声が。
香澄先輩―――…彼女そのもののようだ。

『そう言えばさ、覚えてる?歓迎会のときに―――…』

そこまで、だった。
そこまで聞いた後は、もう、聞いていられなくて。
走ってその場から逃げだした。


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