さくら、ひらひら。
燕尾服にシルクハット、彼の持つ色は白と黒しかない。
片手に胸に手を置き、恭しく丁寧に、まるで執事が主人にするそれのように腰を折る。
上体を戻した彼は、未だ立ち上がれずに先ほどと同じポーズをとっている私を見て怪訝な表情を浮かべた。

『…どうされました、お嬢さん?』

どうされた?
どうされた、って?

「どうもこうも、ないっ……!!」

その言葉が、きっかけだったようにも思う。

「あなた、誰?何者?なんで宙に浮いてるのっ…?!」

周りのことなんて構いもせずに、叫んだ。


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