さくら、ひらひら。
ふと見上げると、頭上には綺麗に咲き誇っている桜の木があった。
その桜は、ライトアップされている桜の群れからはぐれて、一株だけ寂しく、それでいて真っ直ぐに自分を失わず凛と咲き誇る。

『お前とは違うよ』そう、言われてるような気がした。

普通の人なら、満開に咲いている桜を見て感嘆の声を上げるんだろう。
僕には溜め息しかでてこないけれど。

「…桜、嫌い?」

僕はよほど顔をしかめていたのだろう。
隣りにいた君が僕の顔を覗きこんで聞いた。

「…あんまりね。」

ライトアップもされていない、街灯がなければ夜の闇に紛れてしまうのではないかと思える桜を見上げて苦笑する。
闇夜に紛れても桜は桜。
私は綺麗だ、と、誇示しているかのように揺るぎなくそびえ立つ。

……僕とはやっぱり、どこか違う。


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