さくら、ひらひら。
こんな話を真面目にしてしまった照れから、僕はビールを飲み干す。
ましてちょっと気になっている人に、こんな話をしてしまったことを少し悔やむ。
君から見れば僕は、ただの同僚、なんだけれど。

目に付いたゴミ箱目掛けてポーンと空き缶を投げ入れる。
缶は綺麗な弧を描き、カランッと良い音を響かせて、ゴミ箱に入った。

両腕を延ばし「うーん」と伸びをする。
僕は足を組み替えて夜風に気持ちを落ち着かせる。
ヒラヒラと、無数の花びらが空を舞う。
誘われるように、再び桜を見上げた。


昔は、桜に憧れてたよな……。
高みから見下ろす、決して欠点を見せようとしないあの桜に。


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