さくら、ひらひら。
だけど僕は今、桜よりもずっと大好きな花がある。
憧れなんかじゃなくて。
ただ、大好きな。

隣りにいる君との距離は、相変わらず、その手が触れるか触れないか。
その距離は少し僕を切なくさせる。

大人になった僕は、傷つくことを恐れて、真っ直ぐにぶつかることを避けるようになった。
駆け引きなんて言ってはみるけど、本当は傷ついたことに気付きたくなくて、言い訳にただ逃げているだけかもしれない。
後悔や溜め息に埋もれる毎日に、うんざりしながらもそこから抜け出せずもがく僕の手は、一体何を掴めるというのだろう。

指先に君を意識しながら、そんなことを思った。


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