恋の指導は業務のあとに
私の部屋よりもずーっと広くてため息が漏れる。
もしかしたら私の部屋の三倍はあるのかもしれない。
そういえば、玄関も広かったっけ。
ここはきっとファミリータイプなのだ。
十二畳くらいのLDKにテレビと三人がけくらいのソファが一つあって、意外にきちんと掃除してある。
水を出したまま寝ちゃうくらいだから、すっごく散らかってると思っていたけれど、きっと彼女がお掃除してくれているに違いない。
「広いですね・・・一人でここに住んでるんですか?」
「2LDKだからな。兄貴と一緒に住んでいるんだが、今海外勤務中でいない。あんたはこの部屋使えよ。兄貴のベッドだけどソファで寝るよりマシだろ。今シーツとか毛布を出してやるから。クローゼットには何も入ってねえから適当に使ってくれ」
てきぱきと話して私のトランクを床に置いて、男は部屋から出ていった。
クローゼットにはハンガーがあって、ありがたく使わせてもらう。
無造作に仕舞ってあったスーツのシワを伸ばしていると、毛布とシーツがベッドの上に置かれた。
「ありがとうございます」
「あ、一応発熱素材だけど、それでも寒かったら言えよ」
とりあえず必要なものだけトランクから出してベッドメイクを終え、濡れたもの全部バスタオルの上に並べて置いた。
拭けば済むものもあれば、洗わなければいけないものもある。
それぞれ分類して片付け終えるとどっと疲れを感じた。
何て日なんだろうか、まるで二度目の引っ越しをした気分だ。