恋の指導は業務のあとに
覚えてない?
必死に記憶をたどっていると、またまたスッと担ぎ上げられて、今度はベッドの上に下ろされてぎょっとする。
まさか、するの?
心の準備が、まだなんですが・・・。
「ま、待って。あの、そう!お見合い!」
「見合い?見合いがなんだ」
「羽生さん、お見合いしたんですよね?それは、どうなって」
「断った。俺は、あんたが好きだからな」
さらっと告白されて、顔がかーっと熱くなる。
嬉しいけれど、急すぎて展開についていけない。
これが大人の恋なのか。
「おごるのも、常に隣に座らせるのも、気恥ずかしさを我慢するのも、好きだからだ」
「・・・え?」
気恥ずかしい?それって、もしかして。
「あの小説、誰かに買ってもらったんじゃ」
「・・・一体誰に頼むんだ」
「や、柳田さんとか。他の・・・例えば、その、彼女とかいたりして」
「自慢じゃないが、ここ数年女はいない。ついでに言えば柳田とも何もないぞ。アイツは兄貴に一目ぼれしてたからな。相談に乗ったりしていたのが噂になっただけだ。あんたは、俺が、他に女がいるのに、部下に手を出すような男だと思ってるのか」
問いかけてくる羽生さんの眉間にしわが寄って、瞳が鋭く光ってて、超怖い。
「ち、ちがっ・・・で、でも最初に『餓えてない』って言ってたし、ここに女の人がいたもん!」
「女・・・?誰のことを言ってるんだ」
「だって、話してる声が聞こえてきた・・・」
「誰も入れてないぞ。あのとき確かに電話には出たが・・・女の声が聞こえたのか?」
「電話・・・?」
そういわれてみれば、確かに、ぼそぼそと聞こえてきた声は羽生さんの声だけだった。
女ものの靴もなかったっけ・・・私の、思い込みだったの?