恋の指導は業務のあとに


「それに、餓えてないといったのは、ウソだ。そうでも言わないとホテル住まいを選んだだろう。俺は今、十分餓えているぞ。もう、黙れ。俺は、素直で、優しくて、頑張るあんたに惚れたんだ。それに俺の庇護欲をそそる。常に目が離さねえ」


鋭かった眼差しがふわっと優しくなって、「若葉」とささやかれて、髪をそっと撫でられて気が遠くなりそうになる。

そんな甘い声で、今名前を呼ぶなんて、ズルイ。

羽生さんのうるんだ瞳が近づいてきて、耳たぶを甘噛みされた。

熱い吐息が耳にかかってくすぐったくて身をよじると、今度は耳たぶを舐められてゾクゾクする感覚に襲われた。


「や・・・ん、あの、羽生さん・・・私、初めてなんです。今日は、その、下着もかわいくないし、準備が」


できてない、は羽生さんの唇に阻まれて言えなかった。


「下着は関係ない。俺は、この中身がほしい。初めての恥ずかしさとか、痛みとか、全部忘れさせてやる。優しくする。もう、観念しろ」


下着の中身もたいしたことないんですが。

あのときあなたが無視したハダカなのですが。

そう思ったけれど、口にできなかった。

キスをされながらいつの間にか服を脱がされていて、体中を彼の唇と熱い指先が這い回る。

羽生さんは、言葉通りに優しく丁寧に私を抱いてくれる。

恥ずかしさとか時間とか感じないほどに翻弄されて、ただ彼の背中にしがみついていた。

すべてが終わり、ぐったりする私の体を抱き寄せて、彼は言った。


「これからは、プライベートもたっぷり指導してやる。覚悟してろ。いいな?」

「は・・・い・・・」


朝から、朝まで。

日中は厳しく、夜は甘い独占欲に縛られそう。

私は、とんでもない人の彼女になってしまったようです・・・。



【完】
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