恋の指導は業務のあとに
「コインランドリーに行ってきます」
「今から?こんな時間に一人でふらふらしたら、あんた職質受けるぞ。そんなとこに行かなくても、うちの洗濯機使えよ。乾燥機能もあるから放り込んどけ」
場所はそこだ、とLDKの壁にある引き戸を指差す。
聞き捨てならない言葉を聞いた気がするけれども、今はもう十時過ぎ。
明日の入社式のことを考えれば、今からコインランドリーに出掛けるのは正直キツイ。
「じゃあ、使わせてもらいます」
広い洗面洗濯室、その隣にバスルームがある。
ここに水が溢れて私の部屋を濡らしたのだ。
床は意外に渇いているから、あの人が拭いたのだろう。
ここだけで済んで、部屋全体に被害はないなんて、水はほとんど下に流れたのだと改めて実感する。
コンクリートって、完全には防水しないんだ・・・。
原因はここかと考えれば再びムカッとして、手に持った服を洗濯機の中に力任せに放り込んだ。
「もうっ、なんて不運なの!」
やるせない思いを洗濯コースを選ぶ指に込めて、ガシガシ押した。
部屋に戻るとキッチンからいい匂いが漂ってきた。
ジュウジュウといい音がしているから、背伸びをしてカウンターごしに覗いてみると、中華鍋を振るってチャーハンを作っていた。
「あんたも何か作って食べろよ。鍋とかは自由に使っていいから」
そう言われて、今夜食べるものを買って来ていたことを思い出した。
そうだ、大好きなエビグラタンだ。