恋の指導は業務のあとに


それで更に恋愛関係も見た目も“脱子供”を目指しているのだ。

それなのに、幸先がすごーく悪いではないか。

ただでさえ、とんだハプニングにみまわれたのに。


不機嫌なことをアピールするように睨むと、羽生さんは呆れたような声を出した。


「ったく、愛想のねえ女だな。だが、これから約十日間一緒に暮らすわけだ。期間は短いが、一応同居のルールを決めるぞ」

「はい。お願いします」

「1.食事は別。使ったものは自分で片付けること。2.風呂は先に帰ってきた方が準備する。3.ゴミ出しは交互。明日は俺がする。4.互いに干渉しない。5.第二土曜は共同スペースの掃除。以上だ。異論はあるか?」

「いえ、ないです」

「決まりだな。あんたが捨てるゴミ、まとめておいてくれ。じゃ、ヨロシク」


手をひらっと振って、羽生さんは食べ終わった食器を持って立った。

すごくあっさりしていて、気を使う必要はないみたいでホッとする。

食器を洗う水音を聞きながら、私は冷めかけたグラタンをゆっくり食べた。


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