恋の指導は業務のあとに
二度目の不運
株式会社TUJIMOTO。
大理石で作られた看板が、朝日に当たってピカピカと輝いて見える。
エントランスの横にあるそれから視線を上にずらし、5階建ての細長いビルを見上げる。
ここが、今日から働く会社なのだ。
名前だけだと何の事業なのかピンとこないけれど、玩具メーカーで主にブロックなどの知育玩具を製造販売している。
国内と海外にも工場があって、世界中に輸出をしている只今絶賛成長中の企業なのだ。と、パンフレットに書いてあった。
出社してくる先輩社員たちが続々とエントランスに吸い込まれていく。
背筋をピンと伸ばして、私もその中に混じった。
入社式は午前中に大会議室で行われて会食した後、午後からはオリエンテーションをすると、事前にもらった入社案内に書いてあった。
バイトも含めて働くのは初めてで、すごく緊張してしまう。
こっちに出てくる前に友人たちから言われたことを思い出して、脳内で何度も繰り返す。
『先輩たちの言うことはきちんと聞いてね』
『分からないことはすぐ訊くのよ』
『素直と謙虚が一番大事!』
社長のお話と新入社員代表の誓いの言葉が終わり、起業から今までの歴史をビデオで観て入社式が済んだ。
工場勤務の人達も合わせて総勢50人がぞろぞろと歩いて移動する。
会食は社員食堂でお弁当が配られ、席は定められた範囲で自由に座っていいと言う。
どこに座ろうか迷っていると、ねえ!と声が掛けられた。
振り向くと、色は暗めだけれどくるくる巻き毛の綺麗系女子が立っていた。
見た目頭が良さそうで、重役の秘書なんか出来そうな感じだ。