恋の指導は業務のあとに
レストランからカフェに場所を変えて、たっぷりお喋りをして家路についたのは10時を過ぎた頃。
これからも頻繁に女子トークしよう!と琴美と約束をして駅で別れる。
すぐに仲のいい同期ができたなんて、私はすごーく幸せだ。
ここ2~3日ずっと不運続きだったけれど、少しはいいこともあるものだ。
気分も良くマンションに帰ってくると、4階の角部屋に明りが点いているのが見えた。
一番端っこの窓は勿論、羽生さんの部屋のものだ。
「今日は早く帰ってきてるんだ。珍しいな」
いつも私が寝たあと帰ってきてるみたいなのに。
一応、ただいまーと言って玄関を上がる。
LDKの戸を開けて入ると、キッチンから出てきた羽生さんとぶつかった。
「きゃっ」
「おっと」
衝撃でふらついた私の体を、羽生さんの腕がしっかり受け止めてくれた。
「危ねぇな」
頭のすぐ上でため息交じりの声がして、目の前で白いタオルが揺れている。
「ご、ごめんなさい」
羽生さんはほんわりあたたかくて、フローラルな香りが漂ってきた。
見上げれば、前髪から雫がポトンと垂れてきている。
お風呂上りなんだ・・・。
濡れた前髪から覗く瞳が、なんだかとっても色っぽい。
心臓がトクトクとうるさいくらいに鳴るけれど、捕えられたように目を逸らせない。
じっと見つめていると、彼の目がすっと細くなった。