恋の指導は業務のあとに

飲みっぷりを見たせいか、私の返事を待たずに清水さんはビールを頼んでしまった。

運ばれてきたビールジョッキを見て少し悩むけれど、今日は飲めそうな気がする。

体がふわふわしてすごく気持ちがいい。


「それはそうと、池垣さんって彼氏いるんですか?」

「いないですー。ぜんっぜん、モテませんもーん」

「それマジッすか。池垣さん、よその課の男子の間で有名っすよ。羽生さんの後をちょこちょこと一生懸命付いて歩いてて、可愛いって」

「ええっ、そんなー、まさかー。有り得ないですー」


生まれてこの方男子に可愛いって言われたのは初めてで、こういう場でのお世辞だと分かっていてもすごく嬉しい。

照れてしまって、それを紛らわすようにビールをゴクゴクと飲んだ。

顔も体もすごーく熱い。


「ほんとっすよ。俺も・・・」


話しかけてくる清水さんの笑顔が歪んで見える。

料理もジョッキも営業課のみんなも部屋全体がくるくる回る。

もう自分が座っているのか寝てるのかさえ、よくわからない。


「・・・飲み過ぎだ。清水、コイツ何杯飲んだ?」

「最初のジョッキ一杯とこれ少しだけっす。あ、俺が送っていきますよ!」

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