恋の指導は業務のあとに
嵐を呼ぶ男
「痛ーいっ」
頭がズキズキして気持ちが悪くて目が覚めた。
額を押さえながら起き上がって、自分の姿を見てギョッとする。
私、服を着たまま寝ちゃったんだ。
どうして?
えーっと、確か昨日は・・・。
ズキズキする頭を抱えながら昨夜のことを思い出して、サーッと血の気が引いた。
私、居酒屋で酔っぱらっちゃったんだ。
清水さんと話していたことまでは覚えている。
けれど、どうやって帰って来たんだろう。
――記憶がない!
ドラマや小説でよくあるシーンで、記憶がすっぽり消えるなんてまさかーって思っていたけれど、本当なのだ。
男子社員の前で、すごい失態を晒したんじゃないだろうか。
そんなの恥ずかし過ぎる、どうしよう。
ううう、お酒って怖ろしい。
ひとしきり悶えたあと、お風呂に入ってなくて体が気持ち悪いので、とりあえずシャワーを浴びることにした。
「羽生さん、いないのかな?」
LDKに姿が無いということは、まだ寝てるのかもしれない。
起こさないように、そーっとなるべく音を立てずにバスルームまで行ってシャワーを浴びる。
あたたかいお湯を頭から被ってじーっとしていると、少しだけ気分がよくなってきた。
羽生さんに謝らないといけない。きっとすごい迷惑をかけたのだろうから。
「運んでくれたんだよね?」
あの力強い腕で・・・。
転びそうになった私を支えてくれた腕。
ハンドルさばきをする腕。
腕にまつわるいろんなシーンを思い出してしまい、想像するだけで恥ずかしくて再び悶える。
もう、なんてことなんだろうか。