恋の指導は業務のあとに

「ね、何かあったの?悩み?」

「うーん、悩みっていうか。落ち込んでるの。知ってる男子に裸を見られたんだけど、平然としてるの。女に見られてないんだなあって。童顔だし、胸小さいし」


あ、また落ち込んで来た。

顔もスタイルも子どもっぽいなんて、切なすぎる。

せめて胸くらいは大きくしたい。

彼氏のいない私の場合、胸の筋肉を鍛えればいいのかな。


「ちょっと、若葉。裸を見られたって、それって一体どんなシチュエーション?」


ベッドの上ってわけじゃないわよね?と首を傾げる琴美の疑問はもっともで、私はいきさつを話すことにした。


「実はね・・・」


相手が羽生さんなのは内緒にして、マンションの水漏れから始まった同居のことと、風呂上がりに裸を見られたことを話すと、琴美はう~んと唸った。


「入社式前日にそんなことがあったんだ。大変だったね。相手は同年くらいの子なの?」

「ううん、30歳くらいの人」

「そうか。男心は、私にも分からないなあ。健康な男子なら裸を見れば動揺すると思うんだけどな」

「そうだよね。普通は“ごめん”って言って、すぐに目をそらしたりするよね?」

「うーん、でもさ、相手は大人の男子でしょ?何でもないふりをしてるだけかもしれないわ。見た目普通でも、心の中は嵐で、風がビュービュー吹いてるんじゃない?」

「そうかなあ」


心の中は風がビュービュー?

羽生さんが?

まさか・・・。


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