恋の指導は業務のあとに
デスクに戻って営業報告を書き終えたあと、メールチェックをする。
『社員旅行のお知らせ』そんなメールが総務課から届いたのはいつだったか。
受信ボックスを開けて確認すると、10日前に『社員旅行の行程が決定いたしました!』のメールがあった。
「今月末の土日か」
ということは、約2週間後だ。
人数が多いため、本社勤務と工場勤務と日程が分かれるらしい。
牧田さんの言っていた通り、神戸でフリータイムがある。
神戸に行くのは初めてで、ワクワクしてしまう。
「そうだ。服を買わなくちゃ。琴美と相談しよう」
「お、社員旅行の案内っすか。池垣さんの私服姿、俺、超楽しみにしてますから。可愛いのお願いします」
いつの間に帰社したのか、清水さんが私のパソコンを覗きこんでいた。
そういえば、みんな私服で参加するのだ。
外回りが多い営業課と広報課と秘書課はビジネススーツで、他の課の女子は事務服を着ている。
私服っていうと、私もあまり見たことがない。
「じゃあ、私も、清水さんの私服姿を楽しみにしていますね。イケメン風味でお願いします」
「ええっ、風味っすかー。ムズいなあ。イケメン、なら自信があるんだけど」
二人で笑いあっていると、羽生さんが「清水、ちょっと来い」と呼んだ。
「はい!」と急いで駆け寄っていった清水さんに、書類を見せて何か言っている。
「あーすみません!今すぐ直します」
慌てた様子でデスクに戻ってきた清水さんに挨拶をして、帰り支度をした
歩きながら確認したスマホには琴美からのLINEがあった。