恋の指導は業務のあとに

二人で「アレがいい」「これなんてどう?」などと楽しく買い物を済ませ、再びカフェに戻ってスイーツを食べながらお喋りに花を咲かせる。

琴美は職場の先輩社員牧田さんと同棲してる彼氏の愚痴を言い、私は営業の仕事の難しさを愚痴った。

お互いに話を聞くことしかできないけれど、こんな風に表に出すだけでスッキリできて、また明日から頑張ろうと思える。

気の合う同期の存在に改めて感謝して、夕方には琴美と別れた。


ストレスが解消でき、ほしいものを買って、最高に気分がいい。

両手いっぱいに荷物を持ってマンションに戻っていくと、道端にタクシーが停まっていた。

それから降りてきた人を見てギョッとする。


「羽生さん?」


どこに出掛けていたのか、スーツを着ている。

タクシーが走り去っていき、マンション入口に向かう私に気付いたようで、そのままそこに立っている。

まさか、私を待っているの?


「荷物が歩いてくると思えば、あんたか」

「旅行用のものを買ったんです。手持ちの物では足りなかったので」

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