恋の指導は業務のあとに
恋人の条件


社員旅行から数日がたち、会社では新商品が完成して、その売り出しに向けて力を注いでいる。

新しい知育玩具が出るのは1年ぶりのことらしく、商品部でも暫定的なポスターを飾って士気を高めている。

暫定ポスターというのは、まだ販促グッズとしてきちんと出来上がってない、とりあえずのポスターという意味だ。

商品画像に新商品!と文字が入っただけの簡単なデザインのもので、まだ名前も決まっていない。


「羽生さん、少しいいですか?」


最近よく広報課の社員が羽生さんを訪ねてくる。

広報課の仕事は、雑誌の広告掲載申し込みや、TVドラマなどに商品を使ってもらったり、TV番組のスポンサーになったり、宣伝活動が主体だ。

販売やノベルティ制作の契約を取って、会社の利益を得るのが主体の営業活動とは違っていて、普段全く別々で仕事をしている。

けれど、新商品発売では毎回二つの課が協力して仕事をするらしいのだ。

つまり、社全体で一丸となって売り出すような感じ。

ぴりっとした緊張感もあるけれどわくわくするような、そんな雰囲気が会社全体に漂っていて私もやる気が自然にわいてくる。

具体的な販売戦略が決まるまでの期間は会議も多くなるため、営業課主任である羽生さんは、外回りの営業も控えて社にいることが多い。

おかげでエントランスを通ることは滅多になく、牧田さんとはここしばらく会っていない。

社員旅行の時のことがすっごく気になるけれど、知る術がない。

羽生さんには、とても訊けないもの。


それに広報課にはもちろん、元カノの柳田さんがいるわけで・・・。

< 75 / 111 >

この作品をシェア

pagetop