恋の指導は業務のあとに
彼女は、「羽生さん、これどう思います?」なんて、営業課まで意見を聞きにくる。
柳田さんはでこ出しスタイルのストレートの髪型で、ヒールの高い靴で颯爽と歩くデキル女っぽい人だ。
さすが、デキル男羽生さんの元カノ・・・もしくは今カノだ。
どっちなんだろう?と二人の様子を見ていても、私にはちっともわからない。
仕事とプライベートをきっちり分けるオトナなのだ。
ふとした隙にいろいろ考えてしまう私とは、全然違う。
外見も中身も、子どもだ。
「カキネ、レポートは書けたか」
「はいっ、できています。お願いします」
新商品は『ころころりんりん』のバージョンアップのようなもので、玉が自然に転がるのではなく、自分で転がして下まで落とすというものだ。
ちょっしたトラップやシーソーみたいな部分もあり、しかも三段に別れて組み替えられるので、幼稚園児から小学校低学年が楽しく遊べる仕様になっている。
先日この新商品で遊んだので、その感想と商品名案を提出しろと言われていたのだ。
商品名は毎度社員から募集をして会議で決めるという。
そのあと定時までは、ノベルティグッズの見積もりシミュレーションをする。
羽生さんが作ってくれた仮想の取引先に向けて、見積もりを作成するのだ。
基準が厳しくて何度作ってもOKがもらえなくてへこむけれど、頑張るのだ。
合格しないと、いつまでたっても独り立ちできない。
外見を大人っぽくするのが難しいのなら、中身を大人にしたい。
仕事ができる人になりたいのだ。
ウーンと唸りながらも夢中で見積書を作っていると、あっという間に定時になり、「もう帰れ」と言われて支度を始める。