恋の指導は業務のあとに
今日は琴美と約束があるので心が弾む。
今夜はイタリアンのお店で女子トークなのだ!
話題は会社の新商品のことから始まり、最近の社内恋愛のうわさまで多岐にわたる。
「そうそう、牧田さんのことなんだけど。羽生さんに振られたらしいよ」
「え!?いつ?」
「んーあれは社員旅行のすぐあとかなあ。総務課の子が社員食堂で噂してるの聞いちゃったの」
「なんて?」
「社員旅行の夜に、羽生さんに色仕掛けで迫ってキスまでできたけど、抱いてもらえなかったって泣いていたらしいの。“あなたには興味ない。関わらないでほしい”ってハッキリ拒絶されたって」
「えー、そんなこと、言われちゃったの」
「うん、まさに撃沈。羽生さん、きっぱり言うよね。流石だわ。だから牧田さん、今ちょっと元気がないの。毒気が抜けてるわ。この際ずーっと、あのままでいてくれたらいいんだけど」
そっか、そうなんだ。
あのあと、羽生さんは牧田さんのことを突っぱねたんだ。
牧田さんとは、してないんだ。よかった。
「ね、若葉はどうなの?清水さんって人、若葉のこと気にしてるみたいじゃない」
とうとう初カレゲット?って、にこーっと笑う。
「えええ!?そんな、気にしてるなんて、全然そんなことないよ。何言ってるの。だって、普段は全然誘われないよ?」
「えー、そうかなあ。社員旅行のとき、若葉を誘っていたからそう思ったんだけどなあ。あの視線とか、表情とか。恋する男って感じだったのに。う~ん、そうかあ。ね、じゃあ、羽生さんは?どう?サービスエリアでも旅館でも、いつ見ても若葉の近くにいたよ。好きなんじゃない?」