恋の指導は業務のあとに
いろいろ訊きたくても訊けなくて、ほんの些細な優しさがすごく嬉しかったり、羽生さんの言動に“もしかしたら”なんて、ちょっぴり期待しちゃったり、イライラしたり落ち込んだりするのも、みんなそのせいだ。
何で羽生さんなんだろう。
出会いは最悪で、アラサーで8歳も年上で、マイナス10度の冷たさでものすごく怖いのに。
おまけに、元カノもお見合いもその他モロモロ女の影がたくさんちらついているのに。
オコサマ扱いされる私なんて、対象外なのに。
そう、考えれば考えるほど可能性が薄くて、スペシャルに不毛な恋なのだ。
あ、へこんできた。
「もしかして私の気持ちって、だだ漏れ?周知の事実?」
「んーそうでもないんじゃないかな。男子社員ってそういうの鈍感な人が多いし。女子社員は羽生さんしか見てないだろうし。気付いてるのは、私だけかなあ」
「そうか。よかった」
「認めるんだ。やっぱりそうか。羽生さん、仕事ができてイケメンで硬派だもん。女慣れしてそうだし、すっごい極上の男だよね。彼氏には最高」
「でも、羽生さんって、私の理想の恋人の条件から外れてるんだよね」
「条件?何よ、それ」
「ずーっと思っていたの、恋をするならこんな人がいいなあって。真面目で、優しくて、ウソを吐かなくて、私だけを愛してくれるっていう、私にとって最高の人」