恋の指導は業務のあとに


羽生さんなんて、真面目というところしかあてはまっていない。

優しくないし、元カノのこと好きっぽいし。

ウソは、吐いてるかどうか怪しいし。

そもそも、モテモテ男子は対象外だったはずなんだ。

だってすぐに浮気されそうだもの。

でも、好き。


「彼女がいるのかどうかもハッキリわからないのに、どうして恋しちゃったんだろう」

「恋は型どおりにいかないもんだよ。理想と現実は違うもん。この人を好きになる!って決めてするもんじゃないし。だから、彼女がいる人を好きになっちゃったり、妻がいる人を好きになっちゃったり。理屈じゃ止められないと思う」

「うん、そうだよね。恋って、切ないなあ・・・」


牧田さんも、社員旅行の夜はすごく泣いたんだろうな。

傍目にはふざけてる感じに見えたけれど、羽生さんのことが本気で好きだったんだろうと思う。

他人事に思えなくて、なんだか泣けてくる。


「私は若葉を応援するよ!告白して撃沈したら、私の胸で泣いて!」

「ありがとう琴美。そのときは、すっごく濡れちゃうと思うから、タオル地の服にしてね」

「分かった。部屋着でもいい?」

「部屋に招待してくれるの?」


切なさを吹き飛ばすように冗談を言い合って笑う。

この日の女子トークは、琴美に恋のアドバイスをたくさんしてもらって終わった。


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