恋の指導は業務のあとに

うー、超食べにくい。

確かに大人でイケメンスマートな羽生さんと、オコサマでちんまりした私じゃ似合わない。

わざわざ聞こえるように言わなくてもいいのに、自覚しているのだから。

社員旅行中はそれほど感じなかったのに、やっぱりこの人は女子社員に人気があるのだ。

もしかして今までは牧田さんのガードが働いていたのだろうか。

全員を抑え込むとは、恐るべき受付嬢。


事務服を着た女子社員たちがそばを通りざまに羽生さんを見ていく。

華やいだ雰囲気に圧倒されるけれど、当人は全く動じずにカレーを食べている。

話し声とか、視線とか感じないのだろうか。

この人、自分がモテモテだってこと、わかっているのかな?

ちなみに、私にもモテているんですが、気づいてますか?

あなたは、誰にモテたいんですか?

柳田さんですか、それとも、お見合い相手?


「なんだ、さっきから。言いたいことがあるなら、はっきり言え」


カレーを食べる手を止めて、探るような目を向けてくる。

あまりにまっすぐ真剣に見つめてくるから、今考えていることが見透かされそうで焦ってしまう。

しかも、怖い。


「あ、えっと、その、あの、そう!柳田さん!」

「・・・柳田がなんだ」


ますます不機嫌になって、眉間にシワを寄せて首を傾げている。

どうして怒っているのだろう?


「柳田さんはすごいなーって。キリッとしてて、カッコイイです。仕事ができるんですよね。憧れちゃいます」

「カキネはアイツに憧れるのか。まあ、アイツは、俺たち同期の女子社員の中では一人だけ抜きん出ていたからな。女なのに、根性がすわっていた」

「同期なんですか?」

< 82 / 111 >

この作品をシェア

pagetop