恋の指導は業務のあとに
「まあ、とりあえず上がれよ」
この人は・・・30歳くらいなのかな?
背が高くてスマートな体付き。
サラサラの髪に高めの鼻梁、二重の目は大きくもなく小さくもなく綺麗なアーモンド形。
肌も滑らかで一般的な感覚で言えばイケメンの部類に入る。
そう、女に不自由してなさそうな感じ。
常識は一応あるのだろうけど・・・。
「いえ、迷惑かけますので」
「俺とあんたで迷惑は折衷だろ。良い案だと思うが?」
は?せっちゅう?って何だっけ。
確か“二つ以上の案のいいところを取って一つにする”だったような。
この場合、いいところっていうのは互いにホテル代を払わなくて済むってところ?
「あんたもここに住めば、修理工事の進行具合が分かっていいだろ」
確かにそうかもしれない。
でも、あれ?確か彼女がいたんじゃなかったっけ?
私がここに居ても構わないのだろうか。
ここに苦情を言いに来た時のことを思い出していると、手に持っていた食材入りのゴミ袋を奪い取られた。
でもそうか、飢えてないっていうのは彼女がいるからなんだよね。
じゃあ、私には何もしないか。
私が黙ったままでいるので、男は玄関脇にあった私のトランクを持って「決まりだな」と言って奥に入っていった。
「早く上がって来い」
彼女にはきちんと説明するんだろうし、少しの間だけだからいいのかもしれない。
「・・・おじゃまします」