恋の指導は業務のあとに

「池垣さんは頑張ってると思います。俺、ちゃんと見てます。主任に叱られて落ち込んでても、泣かずに一生懸命ついていってる。いつも明るくて元気で、俺、そんな池垣さんがすごく可愛いと思うし、応援したい。好きです」


頭の中を何かで殴られたようなショックが襲って、顔がバーッと熱くなる。

今、好きって言いました?


「え、あの、その、私は」

「俺を好きになってください。俺は、池垣さんだけを思ってます。絶対大事にします」

「あ、あの、待って。離してください」


二人の間に手を差し入れて、なんとか押してみる。

すると清水さんはぱっと離れて、バツが悪そうに頭を掻いた。


「あーごめん、急すぎましたね。今日はコクるつもりはなかったんだけどなあ。池垣さんがあんまり可愛いから、つい。ライバルも手強いんで、焦って・・・」

「ライバルって?」

「いえ、独り言っす!じゃ、俺のこと、考えておいてください。また誘いますから」


じゃ、おやすみ!と言って去っていく背中に向かって、おやすみなさいと声をかけた。

告白されたなんて、初めてだ。

清水さんは、真面目で優しくて私だけを好きでいてくれる。

理想の彼氏にぴったり当てはまる。

けれど、私は・・・。

真剣な気持ちをぶつけてくれた清水さんにきちんと答えられるよう、改めて自分の気持ちと向き合ってみようと思った。

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