恋の指導は業務のあとに
このほうが彼女らしくて、ホッとするような、残念なような、複雑な気分になる。
琴美は、「また自信喪失すればいいのに!」って、あからさまに嫌がっていたけれど。
牧田さんは受付嬢としての仕事はよくできるらしく、頭が上がらないのも悔しいらしい。
今はまだ新人だから敵わないけど、いつか追い越すわ!とやる気満々な琴美を応援したい。
私も負けずに頑張らなくちゃ!
CM撮影の日がきて、羽生さんの運転する営業車でスタジオまで向かう。
助手席に座るだけで胸がときめくのは、羽生さんだけ。
清水さんの隣に座ったときは、こんなにドキドキしなかった。
好きだと告白されても、あまりときめかなかったのだ。
私はやっぱりこの人が好きなのだと、再認識する。
「ポスターが出来上がってくれば、即営業に使うぞ。配布して店頭に飾ってもらうんだ。カキネがメインで、俺はサポートにまわる。いいな」
「はい!」
私がメイン。
羽生さんの口からそんな言葉を聞ける日が来るとは、微塵も思っていなかった。
遥か遠い日のこと、例えば1年後くらいだと覚悟していたのだ。
ポスター配布、多分とても簡単な仕事なのだろう。
だけど、やる気がふつふつとわいてくる。
私、頑張ります!と言うと、しっかりな!と頭をポンとされた。
不意打ちで、心臓が痛いくらいにキュンとなる。
極々たまに、こんなふうにされるから、期待してしまうのだ。
少しは可能性があるのだろうか・・・。
夢を見ても、かまわない?
スタジオに着くと、柳田さんのほかに二人の広報課の社員がいて撮影を見守っていた。