恋の指導は業務のあとに
「ここはね、この穴のところに来たら、こうやるの。見てて」
透明なパチンコ台のようなケースの中、レールの上をころころと転がる玉をポイントごとにレバーで跳ねて転がしていく。
途中で仕掛けられた穴は、ボタンを押すと壁がにょきっと出て穴を避けてくれる。
その直径1.5センチくらいのプラスチックの赤い玉が問題の個所に来た時に、シーソーを操作するボタンと壁を出すボタンを同時に動かして見せた。
すると玉は落ちずにころころと転がっていき、最後にチリリーンと鳴った。
「わあ、できた。すごい!」
男の子の瞳がキラッと光って、尊敬の眼差しを向けてくる。
すごく、かわいい。
「ね?やってみる?右手と左手、両手を一緒に使うの」
男の子が挑戦すると右手と左手を同時に操作できなくて、落としてしまった。
「あー、おちたー」
と残念そうに言う男の子に、「惜しかったね!あとちょっと!」と言って励ます。
表情は楽しそうな感じに変わってきていて、約束の15分になったころには、1回めのチリリーンが鳴った。
「やったー!できた!できたよ!」
初チリリンを喜ぶ男の子の瞳はきらきらと輝いていて、柳田さんはこの笑顔を引き出したかったのかなと思う。
役目を終えて羽生さんの元に戻ると、お疲れ、とねぎらってくれた。
その後撮影は順調に進んで、予定通りの時間に終わった。
男の子が私に駆け寄ってきて、おねえちゃん、ありがとう!と弾けるような笑顔をくれた。
子どもって、本当に素直で無邪気でかわいい。
「ばいばい」と手を振る男の子に手を振って返して、羽生さんの方を向くと、柳田さんと話をしていた。