恋の指導は業務のあとに
「羽生君、ありがとう。助かったわ。彼女、すごいじゃない。あんな短時間で子どもモデルさんを和ませるなんて、広報課に、是非とも引き抜きたいわ」
「それは、お断りだ。うちの大事な部下だからな。引き抜かれては困る」
「うちの?俺の、じゃないの?」
柳田さんと談笑する羽生さんはすごく優しい笑顔をしていて、社員旅行で見たのと同じ雰囲気で声をかけづらい。
二人の間には、入り込めない絆を感じた。
「柳田さんには敵わないのかな、やっぱり。・・・そうだよ。あの表情は、同期以上の人に向けるものだよー」
恋愛初心者の私にだってわかる。
体を重ねたもの同士の絆というか、なんというか。
あれは、きっかけさえあれば、即ベッドにGO!の雰囲気だ。
自宅のベッドに突っ伏してウダウダとする。
最近情報通になってきた受付嬢琴美によると、柳田さんにはずっと恋人がいないらしい。
少なくとも社内には。
外にいれば本人が言わない限りわからないけれど、多分いないそうだ。
誰かと約束してる素振りとかが皆無だという。
だから、新商品販売のプロジェクトで接近した羽生さんと柳田さんの噂が女子社員の間で出始めている。
ヨリを戻したとか戻してないとか。
仕事のできる美男美女の関係は、みんなの注目の的だ。
でも、羽生さんが柳田さんを好きでも、それでも、私は羽生さんが好き。
そうそう気持ちは変わらない。
『好きになってください』
そう言われて、その人を気にすることはあっても、簡単に好きになれるものではない。
「清水さんに返事しなくちゃ」
明日にでもお話しする機会を作ってもらおうと決め、早々に就寝した。