婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)
過去の傷~圭司side~
俺は、ようやく記憶を取り戻した…。
どうして 思い出すことができたのかは、未だに謎ではあるけれど…
きっと あの時のなつの言葉が、俺の心の奥へと封じ込められていた感情を呼び覚まして、浄化してくれたおかげなのだろう…。
なつが言うとおり、俺はあの事件の日から
ずっとトラウマに苦しめられてきた。
犯人は捕まったというのに、常になつの身が危険に晒されているような気がして、不安でたまらなかった。
心配だから…
俺はあの頃、何度その言葉を呟いたことだろう…
夜中に何度も起きて、なつが俺のそばにいることを確認せずにはいられなかったし…
なつを失うかもしれないという脅迫観念に襲われて、なつの職場にも毎日のように迎えに行った。
夫婦と言えど、立派なストーカーだった。
そして 何よりも俺を苦しめていたのは、なつに深い心の傷を負わせてしまったとういう自責の念だった。
俺が、なつから目を離さなければ防げたのに…
そうしたら、なつの体に指一本触れさせずに済んだのに…
俺は、そんな罪の意識に苛まれていた。
もう 二度となつに辛い思いはさせないから
なつは俺が守るから…
そう思うことで、なんとかバランスを取ろうとしていたけれど…
恐怖心や罪悪感…そして 使命感は、知らず知らずのうちに、俺の記憶から10年間もの記憶を消し去ってしまうほどのストレスとなっていたのかもしれない…。
なつは言った。
私は、もう あの事件は引きずってないよ…
ちゃんと 圭司が助けに来てくれたから…
そう
なつは、ちゃんと乗り越えていた…
ずっと なつを支えていたつもりでいたけれど
いつまでも、引きずって、抜け出せなかったのは俺の方だったのだ…。
ようやく俺は、ゆっくりと眠れるようになった…
まあ 今だに、なつの同期からは、ストーカー呼ばわりされるほど、職場には迎えに行ってしまうけれど…
でも それは、俺の嫉妬心を無駄に掻き立てるあの男が悪い…
だいたい とっくに振られてるくせに、俺にライバル心をむき出しに張り合ってくるあいつは一体何なんだろうか…。
中学生かと思うような幼稚さだ…
相手にしないと思いつつ ついつい挑発に乗って、なつに怒られている俺も俺だけど…。
って あいつの話はどうでもいい…。
とにかく 記憶を取り戻した今、俺がするべき事は、なつを心から笑顔をさせること…。
過去に捕らわれて苦むことが、なつを一番傷つけてしまうことだと気づいたから…。
これからは、ちゃんと前を向いて生きて行こうと、心に決めた。