婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)
目を覚ますと、私は病院のベッドに寝かされていた。
ベッドの脇では、私の手をしっかりと握ったまま圭司が眠っていた。
そっか…
私、お腹痛くなって、圭司に救急車を呼んでもらったんだっけ…
病室の窓からは光が差し込んで、すっかり夜も明けていた。
私が体の向きを変えようと動いた瞬間、圭司はビクッとなって目を覚ました。
「ごめんね 起こしちゃたね…」
「あ 俺 寝てたか…ごめんな なつ どっか痛むとこあるか?」
圭司はそう言って、私の頬に手を伸ばした。
「ううん 大丈夫… それより 私って 昨日 どうなったんだっけ…」
お腹の激痛も違和感も、嘘のようになくなっている。
「うん やっぱり なつは、卵巣過剰刺激症候群っていう薬の副作用を起こしてたんだよ 腹水が溜まって、卵巣も少し腫れてたらしくて
もう少しで重症化するところだったって言われたよ…」
「そっか 水が溜まってたんだ…」
「昨日、水抜いてもらった後、なつ一度起きて俺と話したの覚えてる?」
「えっ そうなの? 全然覚えてないな…」
「そっか… だよな あのさ なつ …とりあえず、今回は、安静にしてれば、卵巣の方もすぐ良くなるし、不妊治療をこのまま続けることも可能だとは言われたけど…」
圭司は言いにくそうに、そこで言葉を止めた。
「うん 大丈夫 分かってる… 不妊治療はおしまいにするって約束だったもんね…」
無理して笑った私の顔を、圭司は辛そうな目で見つめた。
私のような多嚢胞性卵巣症候群の患者は、もともと副作用を起こす確率が高いのだそうだ。
もし 副作用が重症化した場合、肝機能障害や呼吸不全などを引き起こす危険性もあると言われ… 圭司は始め、不妊治療に反対していた。
それでも、私がどうしても諦めきれなくて、圭司との約束を守ることを条件に不妊治療を許してもらったのだ。
『例え軽度のものでも、副作用が起きたら不妊治療は、即、中止すること』
だから、もう 赤ちゃんは、諦めなければならない…。
「ごめんね 圭司… やっぱり 私は、圭司をパパにしてあげられなかったね…」
今は何より、そのことが心残りだった…。
賑やかな家庭に憧れると言っていた圭司の言葉を思い出すと、切なくなる…。