婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)
結局 私は入院させられてしまった。
医者からは、家で安静にしていば大丈夫だと言われたのだけれど、私を家にひとりにさせるのは不安だと、圭司が病院に頼んだのだ。
病院の方も商売なのか、普段は埋まらないようなちょっと豪華な特別室を勧めてきて…
『この部屋なら、ご主人も一緒に泊まれますよ。』
このひとことで、圭司は即決してしまい…
私は、今 無駄に広いホテルのような部屋の中で、寝かされている。
昔 父も政治家だった頃は、こういう贅沢な特別室によく入院していたけれど、普通の主婦の感覚を身につけた私は、とてもじゃないけれど落ち着けない…。
頭の中で電卓を叩きながら、早く退院しなくてはと、ため息をもらした。
「おまえ すげーとこに入院してんじゃん」
ガラガラと扉の開く音とともに、松井くんが
花束を抱えて入ってきた。
「松井くん! 何でいるの?」
「何でってことないだろ 心配だから顔見に来てやったんだよ ほら これ おまえにやるよ。」
松井くんはそう言って、持っていた花束をベッドの脇に置くと、ドカッと椅子の上に腰を下ろした。
「あ ありがとう… でも 随分 素っ気ない渡し方するよね~」
松井くんの性格から言って、照れ隠しなのは分かっているのだけれど…
私は苦笑いを浮かべながら、松井くんの置いた花束に手を伸ばした。
それは、カスミソウとオレンジ色のガーベラだった。
「私 ガーベラ好きなんだ~ 特にオレンジ
すごく 可愛いいよね… あ もしかして 覚えててくれたの? 昔 ガーデンウエディングの企画で私がガーベラの花 たくさん飾ってたこと…」
「別に… たまたまだよ…」
松井くんは、ぶっきらぼうにそう答えたけれど、顔は分かりやすいほど真っ赤になっていた。
「そんなことよりさ おまえ 随分 元気そうじゃん?」
「え? あー うん もう 元気だよ でも 圭司がなかなか退院させてくれないの… 早く仕事にも復帰しないと皆にも迷惑かけちゃうって言ってるんだけど…」
「いいんじゃねーの おまえ 今の室長になってから、随分 こき使われてたんだしさ~ 不妊治療してんのに、環境悪すぎたんだよ… まあ1カ月も休みもらえたんだから、ゆっくりすれば?」
「1カ月? えっ 私って1カ月も休みもらったの?」
キョトンとする私を見て、松井くんが納得したように頷いた。