婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)

「なるほどね やっぱ おまえは、何にも知らされてないんだな おまえの旦那… 早く仕事に復帰させようとした室長にキレてさ、パワハラの証拠掴んで、室長をクビにさせたんだよ 皆 あの室長にやられてたから、おまえの旦那に協力してさ… で おまえは、精神的苦痛で体調崩したことになってて、1カ月間も休みもらえたって訳… やるよな おまえの旦那 ちゃんとおまえのかたきとって、休みまで確保して…」
 
うそ~
まさか 私の知らないとこでそんなことになっていたなんて…

確かに、私は今の室長に変わってから、散々意地悪をされてきた。

きっかけは、不妊治療をしてる私への、セクハラ発言だったのだけれど…。

『昨日は、激しかったの?』
『俺とも試してみるか?』

さすがにカチンときた私は、このことを部長に言いつけた。

でも、部長に言いつけたことで、余計に恨みを買ってしまい、今度はパワハラが始まったのだ。

寒い倉庫の中で、一日中、無意味な作業をさせられたこともあったし、病院に行く日を知ってて、わざと休めないように仕事をふってくることもあった。

圭司には心配かけたくなくて、黙っていたけど
とにかく 私はネチネチとしたイジメにあっていたのだ。

「そっか 私 全然 知らなかった…」

「まあ これでお前も、安心して不妊治療に専念できるんじゃねーの?」

松井くんは、ふっと微笑んで私の頭を軽く叩いた。

「ううん もう 不妊治療は終わりにしたの
副作用が出たのも、室長のせいじゃなくて、もともと私には薬のリスクが高かったからなの
でも 圭司がね 子供ができなくても俺は十分幸せだって、言ってくれたから… 私も圭司といられれば、もう 何もいらないかなって…」

あ いけない… 
ついつい 松井くんの前で堂々とのろけてしまった…。

さぞや 不機嫌な顔で文句のひとつでも言われるのだろうと構えた私に…

「そうか 良かったな 旦那と幸せになれよ」

なんて…
そんな優しい言葉が、松井くんから返ってきた。

「えっ 松井くん 何か今日変じゃない?
熱でもあるの?」

「は? おまえ 失礼だな 俺はいつだっておまえの幸せを願ってんだよ どこにいても俺はおまえの味方だから ちゃんと覚えてろよ!」

それは、まるで、もう 会えなくなるみたいな言葉だった。


  
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