婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)
松井くんはチッと舌打ちして、私から離れた。
「圭司…」
圭司は、部屋の入口に寄りかかりながら、松井くんを睨みつけていた。
「はいはい どうもすいませんでした…」
投げやりな口調でそう言いうと、松井くんは椅子から立ち上がった。
「じゃあ 元気でな なつ… 何かあったらいつでも言えよ すぐに飛んできてやるからな」
松井くんはそう言って、私の頭に優しく触れると、ドアに向かって歩き出した。
「待てよ…」
すれ違いざま、圭司が松井くんを呼び止めた。
「何? やっぱり 俺のこと殴んなきゃ気が済まない? ホント血の気の多い奴だな…」
フンと鼻で笑いながら、松井くんがいつものように圭司を挑発する。
「さっきのは、もういいよ その代わり、今日で綺麗サッパリ、なつのこと忘れてくれる?」
「別に… もう 俺は田舎に帰るんだし、なつにどうこうしようとか考えてねーんだけど…」
「あっそう じゃあ おまえの携帯にあるなつの連絡先、今すぐ消してくんない? もう 必要ないだろ? なつとは同期でもなくなるんだし…」
圭司の言葉に、松井くんは首をふった。
「そりゃ できねーな なつに何かあったら俺はなつの元にかけつけてやる約束だから… あんたに泣かされたなつを慰めるの、俺の役目なんだよね まあ 次泣かしたら、今度こそあんたを許さないけど…」
「ふーん 相変わらず図々しいこと言うね…
でも 俺も、そろそろおまえのその理解不能な横恋慕にも、目を瞑ってやれないんだけど…」
「だから 俺は別になつを奪うなんて言ってねーだろ? そもそも なつの幸せを邪魔する気なんてねーんだから!」
「いや たぶん おまえは、そのうちなつに手を出すよ さっきみたいに…」
圭司は全てを見透かしたかのような口調で、松井くんにそう言った。