婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)
◇◇◇
ちょうど二週間が経って、圭司が迎えに来てくれた。
『なつがお世話になりました。今度は、ぜひ うちの方にも遊びに来て下さい。』
別れ際、圭司の言葉に、父も母も嬉しそうに頷いていた。
「圭司 お父様のこと、色々ありがとね…」
運転席のシートを倒しながら、サービスエリアで休憩している圭司にお礼を言った。
「別に俺は何もしてないよ… それより 良かったね パパとママが戻って来てくれて… なつは甘えん坊なのに今まで我慢してて偉かったね。甘えん坊なのに偉い偉い」
圭司は私の髪をワシャワシャさせながら、クスクスと笑った。これは、絶対私をからかっている…
「も~う 私、そこまで甘えん坊じゃないでしょ~」
私は拗ねたように口を尖らせた。
「ははは でも なつは俺には甘えん坊じゃん さっきだって お父さん達の目の前で、俺に抱きついてキスまでしてきてさ…」
「きゃー もう それ言わないで!」
私は耳に手を当てながら、ブンブンと首を振った。
だって、さすがにあれは恥ずかし過ぎる。
いくら二週間ぶりの再会だからって、迎えに来た圭司の胸に飛びついて、キスまでしちゃったなんて…
『なつ お父さん達、見てるから…』
圭司に言われて、後ろにいた両親の存在を思い出し、慌てて離れたけれど、父も母も苦笑いだった。
ホントに思い出しただけで、顔が赤くなる。
「もう あれは私の記憶から抹消したい… なかったことにさせて…」
私がそう言うと、圭司はシートから身を乗り出した。
「じゃあ キスだけやり直そっか?」
「え?」
顔を上げた私の唇に、圭司がそっとキスをした。
あまりの気持ち良さに、思わず圭司の背中に手を回してしまったのだけど…
「続きは、また 後でな…」
圭司は唇を離し、私の頭を優しく撫でながらそう言った。
どうしよう
全然、足りない…
もっともっと、圭司とキスがしたい…
一刻も早く、マンションへと帰りたい…。
なんて言える訳もなく、走りだした車から外の景色を眺めていた。
あれ?
ふと目に入った高速の案内表示に、なんだか違和感を感じた。
「ねえ 圭司 なんか 道が違う気がするんだけど…」
これじゃ、逆に行ってしまうんじゃ…?
「あー 気づいちゃった?」
運転席の圭司が、チラリと私を見て呟いた。
「えっ まさか… また、私を一人でどっかに?」
不安げな顔でそう言うと、圭司は可笑しそうに笑い出した。
「あはは 大丈夫。今度は、ちゃんと俺も一緒だよ。」
「良かった… で 一体どこに行くの?」
「ん? 温泉… 1泊だけどな。本当は、着いてから驚かそうと思ってたんだけど、今日は珍しくなつが寝ないからバレちゃったな… 」
圭司はそう言って笑った。