婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)
翌日、私が圭司に連れて来られたのは、産婦人科だった。
「あ あの 圭司… ここは…」
「いいから おいで…。」
戸惑う私の手を取って、圭司が病院のドアを開けた。
「あら 瀬崎さんじゃな~い 今日は、どうしたの~?」
顔なじみのおばちゃん看護師さんが、待合室にいた私を見つけて飛んできた。
「えっと なんていうか…」
自分がここに来た理由を説明できない私…。
だって、不妊治療をやめた私が、そう簡単に妊娠などするはずがないのだから…。
「実はつわりのような症状が出まして、生理も遅れているし、微熱もあるようなので連れて来ました。」
私の代わりに、圭司がそう答えた。
「そうなの? 瀬崎さん、やったじゃない!それじゃあ 早く先生に診てもらわないとね!」
おばちゃん看護師さんは、ニコニコと笑いながら、私の肩をポンと叩いて自分の持ち場へと戻って行った。
「違ってたら、ごめんな… 昨日、なつが気持ち悪そうにしてたのを見て、なんとなくそう思った… 今月は生理も来てないみたいだし、ここ最近、なつの体も少し熱かった気もして… 検査薬も切れてるし、病院に来た方が早いかと思ったんだ。」
圭司は私を見つめながら、真剣な顔でそう言った。
私はいたたまれなくなって、圭司の視線から逃げるように目を逸らした。
圭司、ごめんね…
それでも、私には赤ちゃんなんて出来てないよ…
生理が遅れているのは、ホルモンのバランスが乱れているせいだから…
胃の不調も微熱も、きっと妊娠したせいじゃない…。
圭司が期待する気持ちも分かるけど、きっと、今回もダメだと思う…。
「圭司 私は妊娠なんて…」
『瀬崎さん 診察室にお入り下さ~い。』
ちょうどそこで、私達は呼ばれた。
圭司は私の手をギュッと強く握ると、一呼吸して立ち上がった。
診察室では、いつもの女医さんが問診票を手に抱えたままニコニコと笑っていた。
「それでは、診てみましょうか ベッドに横になってお腹を出して下さいね。」
言われたとおり私がお腹を出すと、先生は冷たいゼリーのようなものを塗って、グリッとエコーの先を当てた。
私は、移し出される映像を、先生と一緒にじっと見つめていた。
「おめでとうございます 妊娠七週目です。」
沈黙を破るように聞こえてきた言葉に、私は耳を疑った。
「えっ…」
思わず私はベッドから起き上がっていた。
うそ! 私が妊娠!?
そんなことって…
唖然とする私を、圭司が包み込むように抱きしめた。
「なつ やったな…」
圭司が嬉しそうにそう言った。
「私 ホントに妊娠したの?」
それでも、半信半疑の私…。
「そうだよ 今 先生にそう言われただろ?」
「うん…」
私は放心状態のまま頷いた。
「これがエコーの画像です。この丸いボールのようなものが赤ちゃんですよ。ちょっど今、1センチくらいかな」
先生は先程のエコーの写真を見せながら、私達に説明してくれた。
「私達の…赤ちゃん…」
その写真を手にした途端、ポロポロと涙がこぼれ落ちた。
それはまるで、夢でも見ているような感覚だった。