婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)

「あ いい匂い…。もしかして シチュー?」

圭司はゆっくり立ち上がると、鍋の中を覗きながらそう言った。

「あっ うん そう あとサラダ切るだけだから…待っててね。」

そう言って急いで腰を上げた私の前に、圭司がすっと入って包丁を握った。

「いいよ 切るのは俺がやるから…。」

「えっ!」

驚くことに、圭司は包帯から出ている左手の指で上手くトマトを押さえながら、手際よく切り始めた。

うわー 凄い
確かに私がやるより早いかもしれない…。
って いやいや ダメダメ…。
いくら 何でも腕を骨折している圭司にやらせていい訳がない。

「あっ あの 圭司! 私がやるから こんなことしちゃダメだよ…。ねっ 包丁離して!」

圭司の後ろから手を伸ばした。

「いや いいよ また 手を切っちゃいそうで心配だし… 危ないから離れてて…。」

えっ 私って、そんなに頼りなく見えるのだろうか…。まあ 包丁で切ったくらいでメソメソ泣いていたのだから、そう思われても仕方がないか…。

結局 圭司にサラダを任せ、私はテーブルへと料理を運んだ。

「じゃあ いただきます!」

そう言って圭司はシチューを口にした。

「これ 旨いな… なんか 懐かしいというか優しい味がするな…。」

ひとくち食べた後、圭司はそう呟いたままお皿の中のシチューを見つめていた。

ちゃんと覚えててくれたんだね…。
優しい味って…。

「圭司って 亡くなったおば様のシチューが大好きだったでしょ…。だから そのシチューを圭司に食べさせてあげたくて、一年くらい試行錯誤して頑張ったんだ。昔 ご馳走になった味を思い出しながら…。」












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