婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)
番外編

朝の気配を感じ、私はゆっくりと目を開けた。

ベッドサイドの時計を見て、一瞬ドキッとしたけれど、すぐに今日が土曜日だったと思い出す。

そうだよね…
会社だったら、圭司が寝過ごす訳がないものね…。

私はクルリと体の向きを変え、まだ寝息を立てて眠っている圭司の寝顔をじっと見つめた。

睫毛も長くて、均整のとれた顔立ち…。
何度見ても、惚れ惚れするくらい綺麗だな…
お腹の子も圭司に似てくれれば、顔の心配は要らなそう…

私はふふっと笑みをこぼしながら、6カ月になる自分のお腹にそっと手を触れた。

あれから私は、ホテルの仕事を辞め、今はゆっくりと自宅で過ごしている。
お腹の子も無事に安定期を迎えて、最近では胎動も感じられるようになった。

「あっ 動いた」

赤ちゃんの振動を感じて思わず声を上げると、寝ていたはずの圭司の手が横からスッと伸びてきた。

「どれどれ?」

「あ 圭司 おはよう! 分かる? ポコって」

圭司は暫くの間、手に神経を集中させていたけれど…

「うーん 分かんないな…」

圭司は首を捻りながら、ため息をついた。

「おかしいな さっきは、あんなに蹴ってたのに…」

毎回、圭司が触れた瞬間、何故だか動きは止んでしまう。

「俺、嫌われてんのかな…」

「えー まさか~ ちょっとビックリしてるだけだよ…」

本気で心配する圭司が可笑しくて、私が笑いながら答えると…

「そっか そうだよな~ チビ子は恥ずかしくて照れてんだよな~ ホントにチビ子は可愛いな~」

なんて、甘い声を出しながら、圭司は愛おしそうに私のお腹を撫で始めた。

因みにチビ子とは、圭司が勝手につけた赤ちゃんの愛称で、先月女の子と分かった途端、圭司がそう呼び始めたのだ。

圭司は毎日のように、チビ子チビ子と親バカぶりを発揮しているのだけれど、生まれる前からこんな感じで大丈夫なのかと心配になる。

この調子じゃ、チビ子はお嫁にも行かせてもらえない気がする…

そんなことをぼんやりと考えていると、突然、圭司に唇を塞がれた。

「んっ… あっ」

痺れるようなキスが、私の体温を一気に上昇させる。
圭司の舌先から与えられる快感に、思わず甘い声が漏れた。

「今、何考えてたの?」

圭司は少しだけ唇を離してそう尋ねた。

「えっ あっ 圭司はチビ子にメロメロだなって…」

私がそう答えると、圭司は優しく微笑んだ。

「確かにメロメロだけど… 俺が一番愛してるのはなつだよ… チビ子は二番目… だから拗ねんなよ。」

そう言って、圭司は再び私の唇を塞いだ。

ん?
私がヤキモチ妬いてると思ったの?
そんなつもりは無かったんだけど…
まあ いっか…

私は甘く蕩けるようなキスを受けながら、心の中で小さく笑った。





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