婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)

暫く、ベッドでキスをしていると、圭司の携帯がしつこく鳴り出した。

どうやら、かけてきたのは夏樹さんのようで、圭司は不機嫌な声で電話に出た。

「もしもし おまえ、朝っぱらから 何の用だよ… なつ? いるけど… まずは、俺に要件いえよ…」

圭司は一瞬だけ私に視線を向けた後、ベッドに腰掛けながら夏樹さんと話始めた。

そして、結局、圭司は後で折り返すと言って、私に代わることなく電話を切ってしまった。

「ねえ 夏樹さん、どうしたの?」

圭司の顔をのぞき込みながら、私は首を傾げた。

「あー 実はさ… 夏樹が新しくオープンさせたイタリアンの店あるだろ?」

そう 夏樹さんは、先月、イタリア料理のお店をオープンさせたばかり…。ホストクラブの方は後輩に任せ、夜の帝王から、爽やかなイケメンオーナーへと姿を変えたのだ。

そこで働くスタッフ達も全員イケメンだと評判で、若い女性客に大人気らしい。

「凄くお洒落なお店でしょ 写真でしか見たことないけど… そのお店がどうかしたの?」

「ああ どうやら、夏樹の店でレストランウエディングをしたいっていう客がいるらしいんだけど、どんなサービスができるのか、夏樹じゃ、よく分からないみたいで、今日なつに相談に乗って欲しいって言ってるんだけど…」

「へえー そうなんだ~ うん 私でよければ全然いいよ! 検診の予約は4時からだし、それまでなら大丈夫だから…」

私は興奮気味にそう答えた。
ホテルを辞めた私が、ウエディング関係のことに携われる機会なんて無いと思ってたし、何より頼ってもらえたことが凄く嬉しかったから…。

「いや 無理しなくていいよ… 気も遣うだろうし、体にも負担かけちゃうだろ? それに、今日だけで終わらないかもしれないし… あいつ、顔広いから、他あたってもらうよ。」

「えっ 私なら大丈夫だよ。今、ちょうど安定期だし、打ち合わせなら、座ってられるでしょ… 無理は絶対しないから…」

夏樹さんに断ろうとしていた圭司の手を止め、私は真剣な顔で訴えた。

「分かったよ… でも、ホントに無理しちゃダメだからな…」

そう言って圭司は、渋々頷いた。

「うん 分かった。ありがとう あっ 圭司 行きだけでいいんだけど、お店まで送ってもらってもいい? 場所よく分からないから…」

「送るもなにも、ずっと一緒にいるつもりだけど…」

「えっ そうなの 本当にいいの?」

「あたりまえだろ あんなホストだらけのとこに、なつをひとりで置いとける訳ないだろ? 夏樹みたいのがウジャウジャいるんだから… いや、夏樹よりも、たちが悪いかもしれないし、見張ってないとな…」

圭司は、本気で心配しているようだ。

確かに、お店のウエイターさん達は皆、夏樹さんのところで働いていた元ホスト達なのだそうだ。
もっとも、ちゃんと髪も黒くして、チャラチャラした雰囲気は一切出さないようにしているらしいけれど…
気に入った女性客には、影で声をかけているという噂もチラホラ…。

だからって、こんなお腹の大きい妊婦を口説いてくるとは到底思えないし、せっかく機会をもらえたのに、こんなことで夏樹さんの機嫌を損ねたくない…

「もーう 圭司は何言ってるの! 今回は仕事の話なんだから、そんな失礼なことお店で絶対言わないでね。変なヤキモチとかも今日は無しにして…」

思わず、可愛げのない言葉が出てしまった。

「はいはい 分かりましたよ…」

圭司は拗ねたようにそう言うと、再び携帯を握り、夏樹さんに電話をかけた。

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