婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)
「いらっしゃいませ。」
夏樹さんのお店に入ると、早速、笑顔の素敵なイケメン店員さんが近づいてきた。
「瀬崎だけど、夏樹いるかな?」
「瀬崎様ですね。はい 聞いております。どうぞ こちらへ。」
イケメン店員さんはニコリと微笑むと、私達を窓際の席へと案内してくれた。
「ただいま、オーナーが参りますので、少々、お待ち下さい。」
彼は一歩下がって深々と頭を下げた後、私達のテーブルを去って行った。
「何、見惚れてんだよ…」
不機嫌そうに圭司が私を睨んだ。
「えっ 別に見惚れてなんかないよ!」
確かに格好いいとは思ったけど、ちょっと顔を見ただけでこれじゃ、今日は相当やりにくいかも…。
「なつさん 悪かったね 急に呼びだしちゃって…」
ちょっと気まずい空気の中、夏樹さんが現れた。
「あ 夏樹さん…」
「おー お腹、大きくなってる。ちょっと触ってみてもいい?」
そう言って夏樹さんが、私のお腹に手を伸ばした瞬間、パチンと圭司がその手を思いきり叩き落とした。
「イッテー 何すんだよ 響~」
夏樹さんは、圭司にはたかれた手を擦りながら、顔をしかめて言った。
「なつに触んなよ…」
圭司はそう言って夏樹さんを睨みつけると、すぐにプイと窓の方に顔を背けてしまった。
「おー 怖っ」
「ちょっと、圭司… ごめんね 夏樹さん 圭司、今、機嫌悪くて…」
ふーとため息をつく私を見て、夏樹さんが笑った。
「あー 別になつさんが気にすることじゃないよ 響が機嫌悪いのはいつもの事じゃん。それより、お昼まだでしょ? 当日のコース料理をさ、ちょっと試食してみてくれない? 感想きかせてよ。 じゃあ また、後で来るから…」
「あっ 夏樹さん…」
夏樹さんが去った後、私達のテーブルには次々と豪華な料理が運ばれて来た。
「うわ 美味しい! なんかどれも凄く凝ってる… あれだね イタリアンっていうより、フレンチっぽい? あっ この食器も凄く高いやつだ~ 夏樹さん、このお店に相当お金かけたね… きっと、ホストクラブが儲かってるんだろうな…」
私がひとりで呟いていると、圭司がクスッと笑った。
「いいの? そんな感想で…」
「えっ あー そうだよね もっと真面目にやらないとね…」
なんて言いながら、圭司の方に顔を向けると…
私を見つめる目が、いつのも優しい圭司に戻っていた。
私はホッとしながら、再び 料理に手をつけた。
最後のジャラートまで美味しく頂き、紅茶を味わっていると、圭司の手が私の頰に伸びてきた。
「えっ?」
「アイスついてる…」
そう言って、圭司は私の口元を手でこすると、そのままペロリとその指をなめてしまった。
「ちょっと… 恥ずかしいからやめてよ~」
「なんで? ついてる方が恥ずかしいだろ?」
「だからって、舐めなくてもいいでしょ…」
赤くなりながら圭司に抗議していると、夏樹さんがニヤニヤした顔つきで私達の席へとやって来た。