婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)
「俺の店でイチャつくなよ~ ホントに響はなつさんといると見境がないんだから…」
そう言いながら、夏樹さんは私の隣の席に腰を下ろした。
「何でおまえ、そこすわんの?」
圭司は夏樹さんの座った位置が、よっぽど気に入らないようで低い声でそう言った。
「いや だって、一緒に見てもらう資料とかもあるし、同じ向きのがやりやすいんだよ。別に下心とかないんだから、これくらい許せよ…」
「なら、もっと離れろよ…」
「えっ あー はいはい… ったく、おまえがいるとホントやりずれーな」
夏樹さんはため息を漏らしながら、私から椅子を離した。
「あっ 夏樹さん ご馳走様でした… とても、美味しかった。見た目も味も申し分ないし、十分だと思う。」
私の言葉に、夏樹さんは嬉しそうに目を輝かせた。
「マジ~? じゃあ 料理はいいとして… あのさ、なつさん、レストランウエディングって、うちの店だと何ができそう?」
「うーん そうだね~」
私はグルリと店内を見回した。
高い天井にはシャンデリアがいくつもあって、とても華やかな内装だ。
ピアノもあるし、中庭もある…
「何でもできると思うよ… 式だって、この中庭を使ったら、素敵なんじゃないかな。」
私は、ガラス越しに広がる芝生の中庭を差して、そう答えた。
「へー この中庭で式を?」
「うん ほら ここ 可動式のガラスの天井もついてて、天気の心配もいらないし… あそこに祭壇作って、神父さんの出張サービスを頼めばチャペルの出来上がり…」
「なるほどね~」
夏樹さんは、頷きながらメモを取り始めた。
「あー そうそう ウエディングケーキとかってさ、どうしたらいいの? うちにもパティシエはいるんだけど、ウエディングケーキってタワーみたいなやつでしょ? あんなの作れんのかな~」
「うーん 大きな長方形の生ケーキでもいいんじゃない?、今、そういうの流行ってるし、それならパティシエさんなら作れるでしょ。タワーのは殆ど作りものだし、手配とか大変だから… この中庭のテラスでケーキ入刀して、皆で外で食べるっていうのもいいかもしれないね…」
「はー なるほどね… じゃあさ…」
「お話中、スミマセン あの オーナー、店が混んでしまって、僕達だけじゃ回らないんですけど…」
そう言って夏樹さんに耳打ちしてきたのは、先ほどからこのテーブルを担当してくれていたウエイターさんだった。
「あー 今日はもともと一人休んでるからな~ でも、俺も今、打ち合わせ中だし… あっ」
夏樹さんは向かいにすわる圭司を見て、思いついたかのように声を上げた。
「は? 俺? ふざけんなよ 何で俺が…」
圭司はそう言って、拒否したけれど…
「頼むよ 響 ほら、おまえ、接客得意だろ? 要領もいいし、顔もいいし… な? 俺を助けると思って…」
「お願いします! このままだと、お客様に迷惑がかかってしまいます… どうか、助けて下さい。」
夏樹さんに続いて、ウエイターさんまでもが圭司に頭を下げ出した。