婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)
私達は夏樹さんのお店を後にして、産婦人科へと来ていた。
「ねえ 圭司~ 前回はここで待ってる時、ちょっとドキドキしたよね…」
病院の待合室に座りながら、圭司に話かけた。
「そうだよな 性別、教えてもらえる日だったからな…」
「圭司は女の子って分かった途端、この子に激甘になったよね~」
いきなりチビ子と呼び出して、デレデレし出したのはあの日からだ。
「いや だって、なつのミニチュア版だと思ったら可愛くてさ… でも、あれだよな 女の子は男と違って甘やかせられるからいいよな…」
「ふーん じゃあ もし、チビ子が男の子だったら違ってた?」
ふと、知りたくなった…
男の子だったら、圭司はどんな感じだったのだろうって…
「そりゃ男だったら、厳しく育てるよ… 絶対甘やかさないし、根性つけさせて、大事なものを守れるくらい強くさせる…」
そっか
もし、チビ子が男の子だったら、圭司は身をもって色んなことを教えてたんだろうな…
「じゃあ、ケンカの仕方とかも教えてあげてた?」
「はは ケンカか… まあ、あんまり弱かったらしごいてやるけど… うーん なんていうか、そういう強さより、生きていく為の強さをちゃんとつけさせたいかな… スポーツでも何でもがむしゃらにやらせて、精神的に鍛えさせて…って、何で俺達、男を育てる話なんかしてんの… チビ子は女の子じゃん…」
「うん 私も途中からそう思った…」
ふたりでぷっと笑っていると、私を呼ぶアナウンスが聞こえてきた。
『瀬崎なつさん 診察室にお入り下さい』
私達は席を立って、診察室の中へと入った。
「赤ちゃん、元気そうですね~ ちゃんと順調に育ってますよ~」
エコーの画像を見ながら、先生がニコリと微笑んだ。
「よかった。最近、よくお腹も蹴ってくるんです。ポコポコって…」
「そうですか~ さすが男の子ですね。」
「「えっ!?」」
先生の発した衝撃的な言葉に、私も圭司も思わず顔を見合わせた。
「あれ? 私、性別言ってませんでしたっけ?」
「いえ あの この間は先生、女の子だって…」
「あら そうでしたか? じゃあ 前回はおちんちんが隠れてたのね…ごめんなさいね この子は男の子ですよ ちゃんとついてますから…」
先生はニコッと笑って、唖然とする私達にエコーの写真を差し出した。
-・-・-
病院を出て車に乗り込むと、圭司はクククっとお腹を抱えて笑い出した。
「何だよ これ 今日はよく騙される日だな… まさか、チビ子がチビ太だったとはな…」
圭司は、さっそくチビ太と名づけたようだ。
「うん ホントにね… チビ子はチビ太だったんだね…」
私もククっと笑いが込み上げてきた。
「おーい チビ太、聞こえるか~」
圭司は、私のお腹に手を触れ顔を近づけながら、そう呼びかけた。
「おまえが、男って分かった以上、もう 甘やかさないからな ちゃんと覚悟しとけよ!」
そんな圭司の声がチビ太に届いたのか、ポンと大きくお腹が跳ねた。
「蹴った… 今 チビ太が俺の手を蹴ったぞ!」
初めての胎動に興奮する圭司…。
「ハハ 圭司が急に態度変えるから、チビ太が反抗してるんじゃな~い」
「はーん そうかそうか 上等じゃねーか~ これから、たっぷり可愛いがってやるからな~」
圭司は嬉しそうに目を細めながら、私のお腹にキスをした。
[完]
(お知らせ)
「婚約者はホスト!?⑤~愛しい君へ~」に続きます。