婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)
俺を迎えにきたなつは、それまでとは別人のように、ニコニコと笑ってくれた。
そして 俺のことを圭司と呼んだ…。
無邪気で年の割にはちょっと幼い感じのなつ。
きっと これが、本来のなつなのだろうと思った。
なつは、ボストンバックを両手に抱えながら、辛そうに手を持ち替えていた。
見舞い客が置いていったゼリーやジュースの入ったバックはきっと重たかったのだろう…。
『荷物重いよね ひとつかして。』
思わずそんな言葉をかけていた…。
骨折している俺の肩にかけろだなんて、自分でもムチャなことを言っているとは思ったけど…
明らかに無理をしているなつを、俺は見ていられなかった…。
ちょうど そこへ、俺の昔の後輩だという男が現れて、荷物はその男が運んでくれた。車で迎えに来たと言うその後輩は拓哉と名乗り、なつとも随分親しげな様子だった。
いつの後輩かと尋ねた俺に、彼は俺がホストをしていた頃の後輩だと答えた。
驚く俺を見て、なつは俺がどうしてホストをしていたのかを話してくれた。
その内容はちょっと衝撃的だった。
まさか こんなお嬢様育ちのなつが、そんな事件に巻き込まれていたなんて…。
なつは俺に言った。
全て本当の事で、俺の背中にはなつを庇って撃たれた傷もあるのだと…。
俺はその時のことを、必死で思い出そうとしたけれど、酷い頭痛に襲われ少しも思い出せなかった。
マンションに着く頃には、頭痛は治まったけれど、その後、俺はしばらく眠ってしまった。