婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)
寝ている間、芹香が夢に現れた。
夢の中の芹香は、俺と別れたあの時のようにしくしくと泣いていた。
あの頃の芹香は、ロシアへの留学をギリギリまで迷っていた。
行けば、5年…いや もしかしたら ずっと帰って来れないかもしれなかったから…。
芹香は俺に引き止めて欲しかったようだけど、
俺は芹香との別れを選んだ。
わざと冷たくもしたし、離れることに平気な振りもした…。
少しでも未練を見せたら、芹香の決心が揺らぐと思ったから…。
本当はあの日、空港で泣いている芹香を抱きしめて愛してると伝えたかったけれど…。
俺はそれさえもできず、ただ笑って『頑張ってこいよ』と送り出した。
もしあの時 俺が待っていると伝えていたならば、芹香との運命は変わっていただろうか。
ふと そんな事を考えてしまう…。
でも もう そんな気持ちも、今日で終わりにしないといけない。これから俺は、なつときちんと向き合っていくと決めたのだから…。
俺は、夢の中の芹香に別れを告げた。
溢れる芹香への想いを断ち切るために…。
俺は芹香を強く抱きしめながら、さよならのキスをした。
『芹香 愛してる…。』
あの日、伝えられなかった言葉を呟きながら。