婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)
キッチンに立って、朝食の準備に取りかかっていると、圭司がコツコツと音を立てながら、リビングへと入ってきた。
「おはよう なつ。」
圭司は以前と少しも変わらない優しい顔でにっこりと微笑んだ。
よし 気持ちを切り替えよう!
ここで、いじけてたって、何も変わらないのだから…。
「おはよう 圭司。あっ 今 コーヒー入れるけど、ミルクとお砂糖どうする?」
「…ん? 俺ってブラックじゃなかった?」
圭司はテーブルに腰掛けながらそう言った。
「うん ブラックだったけど…でも 圭司って今 記憶の中では高校生のままなんでしょ? だから 無理しなくていいよ あれはすご~く苦い大人の飲み物だからね…」
ん…?
何だろ この 沈黙…。
「ぷっ…」
「なっ 何?」
「いや ごめん…。」
圭司はミルクと砂糖のたっぷり入った私のマグカップを見つめながら、口に手を当て笑いをこらえていた。
「えっ…」
「いや ごめん ごめん 何でもないよ。ただなつが可愛いなと思っただけ…。俺のコーヒーならブラックで平気だよ。気を使ってくれてありがとう…。」
圭司は、なんとなくクスクスと笑っている。
たぶん 何か突っ込みどころでもあったんだろうけど、悪いと思って遠慮しているのだろう。
まあ いいや
そんなことより 今日から良き妻として頑張るんだった。
とりあえず私は、テーブルに朝食を並べて、圭司の向かいの席にすわった。
トーストとハムエッグと野菜サラダ…。
うーん もう少し、お洒落で凝ったものでも作りたかったけど、結局 いつもの簡単メニューになってしまった…。
がっかりさせちゃったかな…。
「ごめんね 大した料理じゃなくて…。」
「そんなことないよ。俺こそ ごめんな 仕事してるのに作らせちゃって…。俺 出来ることあったら、なつが仕事行ってる間にやっておくよ。来週いっぱいまで休みもらってるし…。」